考える人

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たすき掛けは非効率?もっと楽な方法とは

こんばんは。rausumaruです。
突然ですが数学の「たすき掛け」お好きですか?
僕は嫌いです。
しかし、因数分解は苦手ではありませんでした。
たすき掛けに代わるより良い方法を持っていたからです。
ここではその方法を紹介した上で、このたすき掛けについての話を一般化して言えることを考えてみたいと思います。

 具体的な方法のみをすぐに知りたい人はこちら

 

そもそもたすき掛けとは

 

二次式の因数分解をするための方法は主に三つあります。

①和と積から2数を探す(以下和積法と表記)
使う式:\displaystyle x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)
実際にやる事:適切なa,bの組を探す

たすき掛け
使う式:\displaystyle abx^2+(ad+bc)x+cd=(ax+c)(bx+d)
実際にやる事:適切なa,b,c,dの組を探す(ただしaとc、bとdは互いに素)

③2次方程式の解の公式利用(以下解の公式利用と表記)
使う式:\displaystyle x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
実際にやる事:↑の式から与式=0とおいた二次方程式の二解を求める

 
それぞれの方法の使用可能な範囲を考えると、
整数程度の綺麗な数の範囲で因数分解可能かつ\displaystyle x^2の係数が1
→①和積法
整数程度の綺麗な数の範囲で因数分解可能かつ\displaystyle x^2の係数が1でない
→②たすき掛け
複雑な分数や無理数などの範囲で因数分解可能
→③解の公式利用

となります。
これだけ見ると解の公式利用が一番良いように見えます。しかし、計算過程で汚い大きな数を扱うため計算ミスしやすいという問題があり、使用を避けられるなら避ける方が賢明です。

 

例えば以下の3式なら、普通は次のように使い分けます。

\displaystyle x^2+7x+6=(x+1)(x+6)
→①和積法
\displaystyle 2x^2+7x+6=(2x+3)(x+2)
→②たすき掛け
\displaystyle 3x^2+7x+6=3(x+\frac{7+\sqrt{23}i}{6})(x+\frac{7-\sqrt{23}i}{6})
→③解の公式利用


たすき掛けの問題点

それではたすき掛けの何が問題なのでしょうか。
この疑問に答えるために以下の式の因数分解を考えてみましょう。

<1>\displaystyle 66x^2+97x+35=?

(解答はこの章の最後にあります)

 

 

・・・解けましたか?
多くの方はかなり苦労したのではないでしょうか。

この問題では66と35の積の形への分解方法の組み合わせが16通りあり、総当たりで試していくとすると、平均8.5通りの分解を試さないと答えにたどり着くことができません。(実際にはうまく枝狩りすることでもうすこし効率よく計算することは可能ですがそれでも楽ではありません。)

このように式の中に大きな数字が出てきた場合に、正解を探すのがとても大変というのが問題点の一つです。

 

また別の問題点もあります。

以下の式をたすき掛けで因数分解してみてください。
<2>\displaystyle 30x^2+132x+77=?

 

 

 

 

 

 

 

 


・・・解けましたか?それとも解けなかったでしょうか。
実はこの問題はイジワルな問題で、整数の範囲で因数分解できません。

では、どのタイミングで、たすき掛けではこの問題は解けないということに気づくことができるでしょうか?

この問題も<1>と同様に16通りの分解の仕方があるため、16通り全て試した後、ようやく使う方法が間違っていたと気づくことになります。
とても時間がもったいないですね。

このように、たすき掛けで解くことが可能であるか否かがなかなか分からないというのもまた問題です。


<1>の解答:\displaystyle (11x-7)(6x-5)

では代わりの方法は? (理論編)

 

僕の用いている方法は\displaystyle ax^2+bx+cに対して、
和がb、積がacとなるような二数を探すという和積法の変形版です。

二次式の一般式\displaystyle ax^2+bx+cを以下のように式変形します。
\displaystyle ax^2+bx+c
\displaystyle =a(x^2+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a})
\displaystyle =a(x^2+\frac{b}{a}x+\frac{ac}{a^2})
すると上のようになるため、和がb、積がacであるような二数α,βを探すと、\displaystyle ax^2+bx+c=a(x+\frac{α}{a})(x+\frac{β}{a})となるのです。 
(この方法を左右積法と呼ぶ参考書もあるようですが、ここでは新・和積法とします。)

ただしα,βの検討は積がacであることから立てるというのが大事になります。
ここでポイントは、αとβの和(α+β)が、αとβの差(α-β)に応じて単調に変化するということです。
予想したαとβの和がbよりも大きい場合、αとβの差も正解の値より大きいため、次の予想α’はαより小さく、β’はβより大きく取ります。
αとβの和がbより小さい場合は反対に動かせばOKです。

この方法がなぜ優れているのでしょうか。実際に使ってみましょう。

 

実際に使ってみる(実践編)

<1>\displaystyle 66x^2+97x+35=?の場合

 \displaystyle αβ=66×35のため、まずはα=66 β=35と予想してみます。
そうすると和は101となるため、αとβの差を大きく取り過ぎたことがわかります。
そこで次なるβ’は35<β'<66となるように取ります。
35と66の間にある66*35の約数は42と55しかないため、α'=42、β'=55としてみることにします。
この和は97となり、予想が正しかったのだなとわかるでしょう。
したがって解答は\displaystyle 66x^2+97x+35=66(x-42/66)(x-55/66)=(11x-7)(6x-5)と求めることができました。

 

<2>\displaystyle 30x^2+130x+77=?の場合

<1>と同様に、まずはα=77 β=30と予想してみます。
そうすると和が107となるため、差が小さすぎるとわかります。
そこで次なるβ’はβ<30となるように取ります。
当て勘でβ'=14としてみるとα'=165となり、残念!今度は和が大きすぎました。
さて、ここまでの検証で14<β<30と分かりました。この範囲で30*77の約数となるものはβ=21,22の2通りのみなので、それぞれ確認してみましょう。

β=21のときα=110で和は131(不正解)
β=22のときα=105で和は127(不正解)

これで、整数の範囲で因数分解ができないことがわかりました。
よって、無理やり因数分解をする場合は解の公式利用、因数分解をする必要がない場合はここで終了となります。

 

この二例では、新・和積法はたすき掛けよりも効率よく正解を探せていることが分かると思います。それでは簡単な数式の場合はどうでしょうか。

 

<3>\displaystyle 2x^2+7x+6=?の場合

 和が7、積が12となる二数を探します。
この程度なら3と4だなとすぐ探せるでしょう。
解答としては、\displaystyle 2(x-\frac{3}{2})(x-\frac{4}{2})=(2x-3)(x-2)となります。

この例ではたすき掛けより速いとまでは言えないかもしれませんが、同程度のスピードは出せるでしょう。

 

<4>\displaystyle 2x^2+\frac{19}{3}x+5=?の場合

この例では、
\displaystyle 2x^2+\frac{19}{3}x+5
\displaystyle =2(x^2+\frac{19}{6}x+\frac{90}{36})
と式変形することで、和が19,積が90となる二数を求めれば良いことになります。
この二数は9,10であり、解答としては、
\displaystyle 2(x-\frac{9}{6})(x-\frac{10}{6})=2(x-\frac{3}{2})(x-\frac{5}{3})となります。

このような分数が含まれている二次式の因数分解結果は\displaystyle x^2の係数で括られた形で表記するのが機能的に美しいものです。
たすき掛けを利用で計算した場合は二度手間になる所をうまく省けていると言えるでしょう。

 

ここまで見てきたように新・和積法はたすき掛けよりも効率的な方法であるといえそうです。(少なくとも僕はそう思っています。)

それでは、一段高い視点からこの二つの方法の比較について眺めると、どのような理由で新・和積法の方が優れた方法たりえているのでしょうか。
長くなってきたので続きは次の記事で書くことにします。